時事解説

2017年06月15日号

【遺族の無念】
誰も刑事責任を問われない=乗客106人が死亡した尼崎JR脱線事故から12年を経て、確定することになった歴代3社長の無罪


●神戸新聞NEXT
「神戸新聞NEXT」は14日、《106人犠牲「責任どこに」JR脱線3社長無罪確定へ》という見出しで次の記事を配信した。
最高裁の上告棄却決定を受け、事故現場前で取材に応じる遺族の藤崎光子さん(左)と大森重美さん=13日午後、尼崎市久々知西町2(撮影・三津山朋彦)

 誰も罰せられないのか-。乗客106人が死亡した尼崎JR脱線事故から12年を経て、確定することになった歴代3社長の無罪。裁判を見守り続けた遺族は「あれだけの被害なのに」と憤りや落胆を隠さない。検察官役の指定弁護士は午後、神戸市中央区で会見。一方、JR西日本の来島達夫社長は「重大な事故を起こした事実は消えない」。淡々と語った。

 尼崎市の事故現場では遺族の藤崎光子さん(77)=大阪市=と大森重美さん(68)=神戸市北区=が、険しい表情で解体工事の進むマンションを見上げていた。長女の中村道子さん=当時(40)=を亡くした藤崎さんは「非常に残念。最高裁は現実を見てくれなかった。でも決してこれで終わりではなく、追及を続けたい」と苦渋の表情だった。

 2人は重大事故を起こした企業の刑事責任を問う「組織罰を実現する会」として活動。長女の早織さん=当時(23)=を亡くした大森さんはその代表を務める。「歴代3社長は逃げ回っており、同じことを繰り返しかねない。組織罰の必要性をよりいっそう感じた」と力を込めた。

 最高裁の決定を疑問視し、司法制度の限界を痛感する声が多く上がった。

 夫の浩志さん=当時(45)=を亡くした原口佳代さん(57)=宝塚市=は「最高裁の決定はATS(自動列車停止装置)のことばかり。問題は会社の安全意識にある。トップが安全を現場任せにしたことが許されるなんて」と指摘する。

「私たちの訴えは裁判所に届いたのか」。西宮市の山本武さん(68)が一報に接したのは、犠牲になった妻淑子さん=当時(51)=の墓参りの帰りだった。「あれだけ重大な結果を招いたのに。納得できない」と悔しがった。

 長男宏一さん=当時(19)を亡くした小前恵さん(61)=三田市=は「宏一に何も報告できない」と肩を落とす。一方で今後、事故が社会や司法を変えるきっかけとなることを強く望む。「そうでなければ、この12年間は何だったのか」

 妻と妹が犠牲になった浅野弥三一さん(75)=宝塚市=は「やはり現行の司法制度の壁は厚かった」。裁判を見守る一方で「事故の要因はJR西の組織上の問題が絡み合って複雑」とし、JR西と共に事故の背景や再発防止策を探ってきた。「遺族の怒りや悔しさは変わらない。司法の限界が見えたからこそ、他の方法でJR西の責任を鮮明にし、安全を求め続けなければならない」(金 慶順、小谷千穂、神谷千晶、宮本万里子)

●鷲見一雄のコメント
「誰も刑事責任を問われないで幕はおかしい、と思う」


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