コラム

2017年09月12日号

【特捜捜査をみる眼】
<森友学園事件>国有地値引き「最大限やる」と国側担当者が籠池被告と約束―なぜ、そんな約束をしたのか?


●産経新聞
「産経新聞」は12日、《【森友学園事件】国有地値引き「最大限やる」と国側担当者、籠池被告と約束》という見出しで次の記事を配信した。
 学校法人「森友学園」(大阪市淀川区)が格安で取得した国有地の売買をめぐり、学園前理事長の籠池(かごいけ)泰典=本名・康博=容疑者(64)が国側に「ゼロ円まで下げて」と要求した値引きについて、近畿財務局の担当者が「最大限やる」と応じていたことが11日、関係者への取材で分かった。国は最終的に土地に埋まったごみの撤去費として評価額から8億円余りを値引きし、実質的な売却益は数百万円にとどまった。

 大阪地検特捜部は同日、学園が運営する塚本幼稚園などに大阪府や大阪市が交付した補助金約1億2千万円をだまし取ったなどとして、詐欺と詐欺未遂の罪で籠池容疑者と妻の諄子(じゅんこ)=同・真美=容疑者(60)を追起訴。国の補助金と合わせた詐欺罪での立件総額は約1億7700万円となった。

 特捜部はこれで補助金に関する捜査を終結。今後は国有地を学園に不当に安く払い下げ、国に損害を与えたとする背任容疑で国側の刑事責任を問えるかどうかが最大の焦点になる。

 売却益200万円ほど

「ゼロ円に近い形で払い下げをしてほしい。ゼロ円に極めて近い形」

 異例の売買交渉は昨年5月、学園本部がある塚本幼稚園で行われた。籠池被告夫妻が再三「ゼロ円」を強調した相手が、近畿財務局の池田靖・統括国有財産管理官(当時)だった。

 これに対し池田氏が最低ラインとして挙げたのが約1億3千万円。国有地の土壌改良費(有益費)として、すでに投じられた国費と同額だった。コストも回収できない金額では売却できない、というのが池田氏の言い分だった。

 それでも籠池被告は「ぐーんと下げて」と納得せず、さらに土地から「ダイオキシンが出た」と対処を要請。諄子被告が「徹底的に戦う」「損害賠償や」とまくし立て、最終的に池田氏が「ご提示できる最大限でやる」と約束していた。

 後日示された価格は9億5600万円だったが、ごみ撤去費などを引くと1億3400万円。ここから有益費などを除けば土地の売却益は200万円ほどしかなかった。

 関西テレビや民進党チームがこのやり取りを録音した音声データを入手。特捜部も内容を把握しており、籠池被告や当時の財務局職員らへの聴取で、意図を確認しているとみられる。

 ごみ撤去費焦点に

 今後の捜査のポイントはごみ撤去費の算定が妥当だったか否か。財務局側を背任罪で告発した弁護士らのグループは、国の値引きが「4億円近く過大だった」とする1級建築士の鑑定意見書を特捜部に提出した。

 建築士はごみの「深さ」と「混入率」を重視。国は「地下9・9メートル」まで埋まっていると見積もったが、過去の調査でも最深部で3メートル余りまでしか存在が確認されていない。混入率も47・1%で、過去の国調査(平成21年度)の平均値20・7%と比べるとかなり高い。

 これに対し国側は「業者からの説明や写真で深い地点のごみを確認した」などと釈明しているが、特捜部はこうした計算手法の是非の捜査を進めている。

●毎日新聞
「毎日新聞」は11日、「<森友学園>執拗に値引き要求 籠池夫妻追起訴」という見出しで次の記事を配信した。
音声データに記録された主なやりとり

 学校法人「森友学園」への国有地売却に端を発した事件は11日、前理事長の籠池泰典(64)、妻諄子(60)の両被告が詐欺罪などで追起訴され、補助金詐欺に関する捜査は終結した。今後は国側が不当に安く売却したとする背任容疑での捜査に重点が移る。8億円の値引きに、役人のそんたくはあったのか。両被告の執拗(しつよう)な交渉の結果なのか。最大の疑問に答えは出ていない。【三上健太郎、岡村崇】

 ◇財務省「厚遇」説明なく

「ゼロ円に近い形で払い下げしてほしい。グーンと下げていかなあかんよ」。迫る籠池被告に、財務省近畿財務局の担当者が応じた。「1億3000万円を下回る金額はご提示できません。それに近い金額まで極力やる」

 昨年5月18日の録音とみられ、著述家の菅野完氏が公開した音声データには、学園が小学校用地に選んだ国有地(大阪府豊中市)の売買を巡る、籠池夫妻と財務局の会話が残されていた。交渉は最終局面に入っていた。

 安値で買い取りたい夫妻は、根拠を示さないまま、突然、土地がダイオキシンに汚染されていると言い出す。値引きを迫り、おえつを漏らし、「鬼」と暴言を浴びせた。

 だが、財務局の担当者は荒れた交渉を打ち切らず、むしろまとめようとした。国は2015年に学園が実施した地中の廃棄物や汚染の除去費用として、1億3000万円を支出済み。それを下回る額では売却できない--。そう伝えていた。

 国有地の評価額はその後、9億5600万円と鑑定され、校舎建設着工後の昨年3月に新たに見つかったとされるごみの除去費約8億円を引いた売却額は、担当者が示した1億3000万円に極めて近い、1億3400万円になった。8億円の算定は、ごみが最深9・9メートルまであると推定された結果だが、現認されておらず、専門家は疑問視している。

 学園は当初の借地契約でも国から有利な条件を引き出してきた。15年5月、国有地の借地契約を結ぶが、不動産鑑定士が査定した当初の賃料は年約4200万円だった。しかし、学園が軟弱地盤を示す資料を国に提示すると、学園の希望に近い2730万円に下がった。学園の内部資料によると、契約までに籠池被告は財務局担当者の発言を「信ぴょう性を欠く」と非難する内容証明郵便を送りつけ、徹底的に攻めた。

 学園の強硬な交渉の背後には、安倍晋三首相の妻昭恵氏の影がちらつく。小学校計画で、名誉校長に名を連ねた昭恵氏。籠池被告は交渉内容を繰り返し報告していた、と証言している。ただ、財務省は「誰が名誉校長でも関係ない」と、学園への配慮を否定する。

 昨年6月、交渉は妥結したが、財務局は代金の分割払いまで認めた。異例とも言える厚遇の背景には、どのような意思決定があったのか。国会審議で野党側は交渉記録の開示を求めたが、分割払いの頭金を受け取っただけだった財務省は「事案が終了し、記録は廃棄した」として、詳しい説明を避けたままだ。

 価格を事実上示しての交渉も、佐川宣寿・財務省理財局長(当時)が今年3月の国会審議で「事前に、先方側に価格をお知らせすることはない」と答弁した内容と食い違う。昭恵氏も公の場では一切説明していない。

 背任容疑で財務局職員らを告発した木村真・豊中市議は「いびつな取引だったことがはっきりしてきた。特捜部は強制捜査に乗り出し、明らかにしてほしい」と話す。

 ◇黙秘続ける

 籠池泰典被告と妻の諄子被告は7月31日の逮捕以降、大阪拘置所(大阪市都島区)に勾留され、ほぼ連日取り調べを受けている。関係者によると、雑談には応じるものの、容疑については黙秘し、供述調書はまだ1通も作られていない。

 両被告には刑事弁護を得意とする大阪の弁護士が付いた。弁護人以外との接見は裁判所から禁止されている。籠池被告は任意聴取時にも持参していた「被疑者ノート」に取り調べ内容を記録しているとみられ、諄子被告は元気な様子で、差し入れの本を読んでいるという。

 両被告の長男はフェイスブックで「黙秘権は全国民に与えられた権利。(両親は)話すべきことは話している」と記している。

●読売新聞
「読売新聞」は12日付朝刊に「籠池夫妻を追起訴 大阪地検 幼稚園補助金詐取で」という見出しの記事を掲載した。

 その記事の中には次の記述があった。
《2人は、小学校建設に絡む補助金約5600万円の詐欺罪ですでに起訴されており、総額は未遂分も含めて2億円を超えた。特捜部は認否を明らかにしていないが、関係者によると、2人は黙秘を続けているという。

 特捜部は背任容疑の捜査を続けているが、財務局職員らが故意に国に損害を与えたり、自分や第三者の利益を図ろうとしたりしたことを立証する必要があり、捜査関係者は「ハードルは高い」と話す。

 だだ、値引きの根拠とされたごみ撤去費用の算定方法や、一括払いが原則の国有地売却では異例の10年分割払いとなったことなど、売買の経過には不透明な点も多い。

 小賀野晶一・中央大教授(財産法)は「ポイントは、ごみの撤去費用の積算に合理性があるかどうかだ。国には国民が納得できる説明を行う責任がある」としている。》

(読売新聞)

●鷲見一雄の視点
 私の視点でも、ごみの撤去費用の積算に合理性があるとは思えない。高すぎる、という意味だ。国側担当者はなぜ、国有地値引き「最大限やる」と籠池被告と約束したのか、大阪地検特捜部に解明してもらいたいポイントの1つだ。

●鷲見一雄の憎まれ口
 大阪地検特捜部には「法と証拠に基づいて国民の疑問を解明する義務」がある。


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