コラム

2017年07月15日号

【裁判をみる眼】
大阪地裁、「犯人認定に合理的疑いが残る」と判断=懲役6年を求刑された強盗致傷罪の被告に無罪判決


●毎日新聞
「毎日新聞」は14日、「<強盗致傷>被告に無罪判決、大阪府警、ずさんな捜査で」という見出しで次の記事を配信した。
 大阪府八尾市のパチンコ店で2012年、現金が入ったかばんを奪おうとして従業員らにけがをさせたとして、強盗致傷罪に問われた同府羽曳野市の男性(37)の裁判員裁判が14日、大阪地裁であり、伊藤寿裁判長は「被告以外の者が犯人である可能性は十分残っている」として無罪を言い渡した。

 弁護側によると、大阪府警が約4年間にわたって捜査を放置。昨年、大量の捜査放置事案が発覚し、府警が捜査を再開して男性は昨年10月に逮捕されたが、否認していた。

 公判では直接証拠がなく、▽事件で使われた車のナンバープレートが、男性が車庫で保管していた物と同一か▽防犯カメラに映った人物が男性か--などが争点となった。

 検察側は、警察官が事件直後にパチンコ店の店長から聞き取った目撃情報などから、車が「なにわ」を含むナンバーと主張した。しかし、詳しい調書は作られておらず、事件から5年以上が経過した公判では、店長が「どのような状況だったのか全く覚えていない」と証言していた。

 伊藤裁判長は「『なにわ』の文字があったとは認められない」と指摘し、防犯カメラ映像についても「見た目の雰囲気が似ている程度にとどまる」として検察側主張を退けた。

 弁護側によると公判には当時の捜査員も出廷し、「忙しくて捜査していなかった」などと証言したという。

 府警では昨年、61署で30年以上にわたり、事件の捜査書類や証拠品が放置され、2270事件で公訴時効が成立していたことが明らかになっている。大阪地検の畝本毅次席検事は「判決内容を精査し、上級庁と協議の上、適切に対応したい」としている。【遠藤浩二】

●朝日新聞デジタル
「朝日新聞デジタル」は14日、「パチンコ店強盗、男性被告に無罪判決 大阪地裁」という見出しで次の記事を配信した。
 大阪府八尾市のパチンコ店で2012年3月、かばんを奪おうとして従業員にけがを負わせたとして、強盗致傷の罪で起訴された同府羽曳野市の男性被告(37)の裁判員裁判の判決が14日、大阪地裁であった。伊藤寿裁判長は、無罪を言い渡した。

 警察は現場から逃走した車のナンバーの目撃情報から昨年10月、男性を逮捕したが、捜査段階から否認していた。

 ナンバーの目撃者とされた証人が公判で当時の状況を「全く覚えていない」と証言しており、判決は「男性以外が犯人の可能性が十分ある」と述べた。検察側が防犯カメラに映った犯人と男性の特徴が一致しているとした点も、「見た目の雰囲気が似ているという程度」と判断した。

●産経ニュース
「産経ニュース」は14日、《「犯人認定に合理的疑い」強盗致傷罪の被告に無罪 大阪地裁》という見出しで次の記事を配信した。
 大阪府八尾市のパチンコ店で従業員2人に暴行し現金を奪おうとしたとして、強盗致傷罪に問われた府内の無職男性(37)の判決公判が14日、大阪地裁で開かれ、伊藤寿裁判長は「犯人とするには合理的な疑いが残る」として無罪(求刑懲役6年)を言い渡した。

 男性は平成24年3月、八尾市のパチンコ店の景品交換所で、現金入りのかばんを奪おうと従業員に催涙スプレーをかけるなどし、2人に全治約1週間のけがをさせたとして起訴された。男性は一貫して犯行を否認していた。

 公判で検察側は、犯人の車の目撃証言と男性が保管していたナンバープレートが一致したと主張。しかし、証人出廷した目撃者が部分的に「覚えていない」と証言したことから、伊藤裁判長は「一部一致の可能性にとどまる」と判断した。

 弁護側によると、公判の証人尋問で府警の捜査員が「24年夏以降、捜査していなかった」と証言。男性が起訴されたのは昨年11月で、弁護人は「長期間の捜査放置の末に、誤った証拠評価で起訴された」と批判した。

 府警は昨年、捜査放置により2千以上の事件で時効が成立したと公表。時効成立前の事件については再捜査を指示していた。

●鷲見一雄の視点
 大阪地検は府警の捜査をノーチェックだったのではないか。懲役6年を求刑した犯罪証明をした、とは思えない。

●鷲見一雄の憎まれ口
「疑わしきは罰せず」は刑事裁判の原則。刑事訴訟法336条は「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪の言渡をしなければならない」と定めている。本件は裁判官の視点ではその典型例といえる。


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