コラム

2017年07月13日号

【裁判をみる眼】
<電通違法残業>正式裁判に=日本を代表する大企業の刑事責任が正式な裁判で審理されることは極めて異例


●毎日新聞
「毎日新聞」は12日、「<電通違法残業>審理公開、驚く検察 識者は評価」という見出しで次の記事を配信した。
◇東京簡裁「略式命令は不相当」と判断 正式裁判に

 電通を巡る違法残業事件は12日、東京簡裁が「略式命令は不相当」と判断し、公開の法廷で審理されることになった。異例の判断に、略式起訴した検察からは驚きの声が漏れ、労働問題の専門家からは「社会へのメッセージになる」と評価する声が上がった。

 今回の簡裁の判断について、ある検察幹部は「被告が否認しているわけでもないのに、略式起訴が正式な裁判になるのは珍しく、意外だ」と驚いた様子。別の検察幹部は「社会的注目を集めた事件だったので、公開の法廷で行うべきだという考えで出した判断なのかもしれない」と推測し「検察としては証拠もそろえて問題なくやっており、略式でも正式な裁判でも影響はない。粛々と公判に向けて準備する」と話した。

 あるベテラン裁判官は「今回の電通事件は、事案が複雑で慎重な審理が必要なケースだと判断されたのではないか。あり得る判断だと思う」と語った。簡裁は今回、「不相当」とした理由を明かしておらず、別のベテラン裁判官は「例えば事実認定のために証拠調べが必要な場合など、どういう時に『不相当』と判断するのかは、裁判官の間で共通認識がある。それを踏まえて淡々と判断したのではないか」と分析した。

 日本労働弁護団事務局長の嶋崎量弁護士は「長時間労働は人の命に関わり、刑事罰も科されうる問題であるとの認識が電通事件で広まった。公判が開かれればメディアでも報道され、労働問題を軽く考えてはいけないという社会的メッセージが発信される」と簡裁の判断を評価する。

 その上で「政府は残業時間の上限を法定化して罰則を設ける方針だが、使用者が労働者の労働時間を適正に把握していない現状では『隠れ残業』が増える恐れがある。公判を通じ、社会で過労死の原因と対策を考える必要性を感じてもらいたい」と話している。【平塚雄太、伊藤直孝、巽賢司】

●朝日新聞デジタル
「朝日新聞デジタル」は13日、《電通違法残業、法廷へ 検察反発「特別な事件でない」》という見出しで次の記事を配信した。
電通の労働基準法違反事件を巡る主な動き

 新入社員の過労自殺に端を発する広告大手、電通の違法残業事件は、法人の刑事責任が法廷で問われる事態に発展した。労働事件で公判が開かれる例は少なく、日本を代表する大企業の刑事責任が正式な裁判で審理されることは極めて異例。労働事件の捜査や企業の労務管理、経営者の意識に今後、大きな影響を与えそうだ。

【写真】高橋まつりさん

「一般的な決定とは言いがたい。会社は違法残業の事実を認めており、略式命令を出すべきではないか」

 東京簡裁が出した「略式不相当」の判断について、東京地検幹部は強く反発した。

 検察では、昨年末に厚生労働省が一部の事件を書類送検してから、「幹部個人の立件は難しいが、法人は略式起訴できるだろう」という見方が多数を占めていた。山本敏博社長は厚労省の任意の聴取に違法残業を防ぐ体制の不備を認めており、過去の同種の事件の処分を踏襲した判断だった。最高検幹部も「特別な事件ではない」と話していた。

 東京地検は半年間の捜査で、社員の出退社記録やパソコンの使用記録などの物的証拠をもとに、社員の違法残業に対する管理職の認識を調べた。その結果、管理職らが強制的に働かせたり、出退社記録の改ざんを指示したりといった悪質性は確認できなかったという。

 電通では残業時間について労使が結ぶ「36(サブロク)協定」が組合の加入率の低下で、一時無効になっていた。送検された内容に含まれた人以外も法の制限を超えて残業していたことが捜査で判明したが、検察は「上司に違法行為をさせた認識はなかった」と判断。約6千人いる本社で違法残業と認定したのは4人、時間は1カ月で最大19時間にとどまった

●産経ニュース
「産経ニュース」は13日、「電通の違法残業事件は公開法廷へ 問われる電通の認識 働き方考える契機に」という見出しで次の記事を配信した。
 新入女性社員の過労自殺が発端となった電通の違法残業事件が、公開の法廷で裁かれることになった。

 簡裁は非公開の書面審理だけでは妥当ではないと判断したとみられる。刑事訴訟法では、被告が法人の場合、代理人を出頭させることができると規定している。公判では、電通側の幹部か社員が出廷し、法人として罪状認否を求められることになる。

 東京地検の捜査の過程で、電通本社が労働組合と交わしていた労使協定(三六協定)が無効だったことが判明している。ずさんな労務管理の一端が露呈しただけに、公判では改めて事件への電通の認識が問われそうだ。

 ただ、法務省幹部は「争いがない以上、公判はすぐに終わる。あまり意味があるとは思えない」と指摘する。検察幹部の一人は「世間の注目を集めた事件だけに、裁判官のパフォーマンスなのではないか」と語る。争点がない以上、証拠調べで新たな事実が明らかになる可能性は低いという。

 大手企業の職場で、違法な長時間労働が罪に問われること自体が異例だった。出退勤記録から労働時間を認定しやすい工場や飲食店などの従業員に対し、実稼働時間の精査が求められるためだ。厚生労働省の「過重労働撲滅特別対策班」は個人の起訴を求める「厳重処分」の意見を付けて書類送検したが、上司ら幹部は起訴猶予となった。

 事件は政府の「働き方改革」にも影響を与えた。公判を改めて国民全体で考える契機とすべきだ。(大竹直樹)

●鷲見一雄の視点
 時代は進化しており、裁判官の認識も変化しているということだ。

●鷲見一雄の憎まれ口
 これからは「法曹3者だけの認識(不文律、常識)だけで裁判の仕組みの総てが決められる、という風潮は減少するのではないか。ともあれ、昨今の国家秩序の崩壊傾向に不快感を示す裁判官や検察官OBが少なからずおられるのは厳然たる事実だ。これは三権分立、法の支配の視点では由々しき問題である。



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