コラム

2017年03月21日号

【裁判をみる眼】
原発避難者訴訟判決=「事故は予見でき、適切な対策を取れば回避できていた」は、原道子裁判長ら裁判官の「勇気ある判断」


●産経ニュース
「産経新聞」は18日、《原発避難者訴訟判決 原告弁護団「国の責任 正面から認めた」》という見出しで次の記事を配信した。
「賠償額は少額に過ぎるが、国の責任を正面から認めた上、強制避難か自主避難かを問わず、各原告の個別状況ごとに賠償額を算定した点は評価できる」

 東京電力福島第1原発事故をめぐる集団訴訟で、東電と国に賠償を命じた前橋地裁判決を受け、原告側弁護団が17日、前橋市内で記者会見を開き、鈴木克昌(かつよし)弁護団長はそう語った。

 判決は「事故の予見や回避はできなかった」としてきた国や東電、東京地検などの判断を否定し、「事故は予見でき、適切な対策を取れば回避できていた」として国や東電の過失を認定した。

 弁護団の一人は「一般論で言えば天災に伴う事故で過失を立証するのは困難だ。しかし専門家の証言などを積み重ね、緻密に過失を立証してきたことが奏功した」と胸を張った。

 全国に先駆けて判決を言い渡した原道子裁判長の訴訟指揮も評価。「被害救済は迅速に行われなければならないという観点から、早いスピードで審理を進めてくれた」と話した。

 一方、請求を棄却されるなどした原告の控訴については「判決内容の分析や原告の意思確認が必要となる。まだ何も決まっていない」としている。

●産経新聞
「産経新聞」は18日、「原発避難者訴訟判決 勝俣元会長らの裁判に影響も 事故予見可能性を認定」という見出しで次の記事を配信した。
東京電力福島第1原発事故をめぐる法的責任の追及は、民事裁判だけでなく、東電の旧経営陣3人が起訴された刑事裁判でも行われる。刑事裁判では「事故を予見し、回避できたのか」ということが最大の争点となるが、「東電は事故を予見しながら対策を取る義務を怠った」と認めた前橋地裁判決は、今後の刑事裁判にも影響を与えかねない。

 刑事裁判では、勝俣恒久元会長(76)▽武藤栄元副社長(66)▽武黒一郎元副社長(71)-の3人が「事故を予見し、回避する義務を怠った」として業務上過失致死傷罪で起訴された。現在、東京地裁で争点や証拠を絞り込む公判前整理手続き中だ。

 ただ、この起訴は検察官によるものではない。東京地検は2度にわたり、「事故の予見・回避は困難だった」として3人を不起訴としたが、検察審査会が「事故前に巨大津波が発生して事故が起きる可能性を示すデータがあったのに、対策義務を怠った」として起訴を議決。検察審査会法の規定により、裁判所から指定されて検察官役を務める弁護士が起訴した。ただ、民事訴訟で東電の法的責任が認められたとはいえ、刑事でも同様に認められるかは未知数だ。

●鷲見一雄の視点
 原道子裁判長ら裁判官は原告側の主張を受け入れ、国や東電、東京地検などの「事故の予見や回避はできなかった」という主張と対立する判決を出し、話題を呼んでいる。
 判決は、原子力災害の特徴について、「侵害される法益が極めて重大で、被害者が広範囲に及ぶ」、国に対する責任に関しては、「規制権限の適切な行使による発生防止が期待されていたにも拘わらず、行使を怠った」と手厳しく批判した。
「原発」は国と東電、関電等が「国策民営」で推進してきたのは周知の事実だ。従って電力会社、国の予見、回避義務も裁判所が広く解釈して当然といえる。

●鷲見一雄の憎まれ口
 前橋地裁の判決は、裁判官に勇気がなければ出せない判決だ、と思う。控訴して逆転しようと、国、東電の強い反発、識者の批判が予測されるからだ。刑事裁判は検察官役の指定弁護士による、「丁寧な立証」が必要だ、と思う。


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